事業経営の道を選んで独立したものの、日頃からの悩み事のひとつに、「いかにしてイノベーションを生み出すか」 という課題があります。
”イノベーション無き事業では、新しい時代は創れない”と常々考えつつ、自分が人生において何をすべきかを模索しているのだけど、さて問題は「いかにしてイノベーションを生み出すか」ということ。 イノベーション=革新、新機軸や新制度という意味ですが、革新を生み出すにはまず既存の不要なモノや制度を壊し、既存の常識の型を破り、
それに置き換わるor内包する新しい何かを創造しなければいけない、そこまでは自分の中で合点しているところなのです。
では実際にどのような行動をするべきなのか、その点において自分なりの解が見えていません。例えば、極端な次の二つの考え方があると思っています。
- 強みをどんどん伸ばすことに注力する。その延長線上に、既存のビジネスを破壊する爆発力がうまれる
- 特定の分野に特化せず、バランスを保ったまま全体を伸ばすことで、既存の枠を超えた新しいものがうまれる
う?ん、どちらも間違ってはいなんだよなあ。前者は「好きこそものの上手なれ」でより強くなっていく、例えば技術屋集団のGoogle。かたや後者は、必要とされることは可能な限り満遍なく伸ばそうとする、例えばライフエンジン
Yahoo!。
ヤフーやGoogleといった事業を例にすると話が大きくなりすぎてしまうので、個人的なスコープに話を戻してみると、一昨年頃から自分の中で方法論の切り替えを行いました。それは、
- 自分の強みはテクノロジー。
誰にも負けないと思えるくらいの技術力と発想力と行動力があればイノベーションは開ける - 技術だけで頭でっかちでは、せっかくの良いアイデアも実現性が乏しくなってしまう。政治、経済、金融、国際、商業、文芸、etc、 枠を問わず興味がある分野をバランスよく身に付け、組み合わせを増やすことでイノベーションは開ける
以前の自分は完全に前者の人間でした。しかし、そんな自分に迷いや弱さを感じて、少しでも弱みをなくすべきだと考え後者の行動に切り替えたのです。
でも、やっぱりまだ自分の中でしっくりとこない。たしかに以前に比べて知識もついたし、異なる分野での発想を元に別分野で応用するといった知恵も付いた。 だけど、なんだか「爆発力」が足りないんだよなあ?
そんな折、 カンブリア宮殿というTV番組@テレビ東京に出演していた中村勘三郎の言葉に、強いヒントを感じました。
「型破りとは型のある人がやるから型破り。
型のない人がやったら、それは形無し。」
これは、昔まだ勘九郎を名乗っていた19歳頃のこと。唐十郎の歌舞伎を見て感動し「俺もあのような歌舞伎がしたい」と、先代の勘三郎(父親)に言ったところ「百年早い。そんなことを考えてる間に百回稽古しろ」と言われたことがあったのだが、それは「古典をしっかり学んで自分の型をつくれ。未熟な者が土台も無いのに新しいことをやるな」という意味が込められていました。
しばらく勘九郎自身、なぜだかわからなかったのだが、無着成恭(むちゃくせいきょう)さんがラジオの「こども電話相談室」で言っていたこの言葉を聞いて、先代勘三郎の言葉の意味がわかったらしい。
「中村勘三郎さんが経済番組のゲスト?」と思っていたのだけど、この言葉はとても嬉しい収穫だった。
やはりね、自分の強みを伸ばすことを遠慮してはいけないんだな。自分の弱みをつぶしていくことも重要だけど、それは二番目。
去年のわくラボ忘年会で「僕は技術屋あがりだから、どうしても実装という枝端の部分から考えてしまう。もっと上流から考える力を身に付けないといけないと思う」と言った僕の言葉に対して徳力さんが、「でも、やのしんさんの強みであるその部分は伸ばすべき。そういう人も大事。他の部分は他の得意な人に任せられればいいのだから」と言ってくれた言葉を思い出した。
あまりに多くのものに手を出しすぎてしまうと、何かを知った気になってしまって危ない。その結果、基本を知らず、
努力をすることもなく、何も力のないまま型を破ろうとして、実は「形無し」だったということにもなりかねない。
好きなことこそ血のにじむような努力も苦じゃないわけで、それを続けて基本を身に付けた上で、
その基本を自分なりに壊すことを「型破り」と言えるのだろう。それができたとき、自分が求めているイノベーションが見えてくるに違いない。 うん。